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校長ブログ

~校長室の窓から~ 「放送朝礼のお話 社会科 大原先生」

2023.11.28

 中東パレスチナのガザに対するイスラエルの容赦ない攻撃が続いています。世代や年月を超えた憎しみの連鎖であるパレスチナ問題は、「2度とほどくことができない結び目」とも言われ、戦いの犠牲になる子どもたちの姿を見るたびに、悲しみややるせなさを感じます。

 しかし、人間には憎しみの感情の連鎖だけではなく、善意や友愛・正義の感情の連鎖も確実にあります。人間は根源的には「正しくありたい」存在なのです。

 1960年代、アメリカ南部のジョージア州に二組の夫婦が暮らしていました。黒人のキング夫妻と、白人のロバーツ夫妻です。キング夫妻は自分の子供たちに演劇を習わせたいと考えていましたが、当時のアメリカ南部は人種差別の強い地域で、黒人の子供を引き受けてくれる教室はありませんでした。最後に頼ったのがロバーツ夫妻の演劇教室です。キング夫妻が尋ねると、ロバーツ夫妻は「わかりました、来てください」と快く応じ、両家の交流が始まりました。

数年後、ロバーツ夫妻は子供を授かり、出産が近づきましたが、その費用を準備することが難しい状況でした。この時に費用を援助してくれたのがキング夫妻です。無事に生まれた女の子は「ジュリア」と名づけられました。半年後、キング夫妻の夫は暗殺されてしまいます。この人物こそが、長年非暴力で人種差別撤廃のための公民権運動を指導してきた、マーティン・ルーサー・キング牧師です。そして彼が誕生を手助けしたジュリアは、のちのアカデミー賞女優、ジュリア・ロバーツさん。現在は女優業とともに、貧困家庭の援助のための慈善活動に力を入れています。善意のリレーは、確実に世代を超えて受け継がれています。

 高校3年生の皆さん。清泉での授業ももう少しで終わり、あとは卒業試験を残すのみとなりました。その後、受験本番までの最後の戦いが始まります。焦りや孤独に苦しむこともきっとあるかと思いますが、これまで自分が積み重ねた時間を信じ、ペースを崩さず、最後まで学習を続けてください。この時間は確実に皆さんを強くします。

そして卒業後も様々な場所で活躍されるかと思いますが、ぜひ、皆さんの心の中にもともとある暖かい感情を大切にしてください。

「絶望のあるところに希望を、悲しみのあるところに喜びを」

 きっと皆さんは与えることができる人間であると信じています。清泉での学びの日々を通じて身につけた知識だけでなく、大切な価値観を、多くの人に伝えられる存在であって欲しいと願っています。きっとその善意のリレーは、時間や場所を超えて受け継がれ、広がっていくことかと思います。

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