中3の皆さん、中学ご卒業おめでとうございます。そして今日は２０２３年度の終業式でもあります。2023年度は色々な行事がコロナ以前に戻った年でした。戻る、といっても、元の形を知らない人も増えた中で、元通りにするのは多くの苦労がありました。でも色々な行事で皆さんの笑顔や活躍する姿を見ることができて、本当に嬉しく思いました。やはり私たち人間は誰かと一緒に何かをやることに大きな喜びを感じるのだと実感しました。

　中3の皆さんが高校生になるこの時期、私は学びについて改めて話したいと思います。昨日朝礼の時、橘先生が養老孟さんの言葉「生きることは学ぶこと」と紹介してくださいました。私は今日、「学ぶことはつなげること」という話をしたいと思います。

    この３月、定期試験が終わった後、学年によって異なる活動をしました。中１、中２、高１は学校でメディエーション、Catch Your Dream、東大の宇野ゼミなど、いつも違う外部講師の方にワークショップをしていただきました。中３はライフオリエンテーションで広島へ、また高２は修学旅行でそれぞれ自分が選んだコースに飛び出していきました。こういう特別授業、というか、学習はいつもの授業と違います。後にテストがあるわけではないし、正解しないと✕がつく、というわけでもありません。だから、いつもよりリラックスして参加できるけれど、反面、自分から学ぼうという姿勢を持って参加しないと、大して何も身に着かない、という残念なことになってしまいます。

    私はこのいつもと違う特別授業、というのは「点」と「点」を結んで「線」にしてくれる、もしかしたらさらに「面」にしてくれるものだと思います。わかりやすい例で言うと、中学では希望者対象にmath in Englishの授業がありました。これは「英語」と「数学」を結んでくれた授業でした。Catch Your Dreamも「英語」や「数学」などの学校での学びが将来の「職業」「仕事」とどうつながるのか示してくれました。また、実際に旅行に行けば、事前に調べていった「歴史」「地理」などが時代や距離を越えて実際のモノやコトとしてつながります。中3の方たちは広島に行きましたが、教科書の記述が現実に起きたこととして結びついたし、平和について被爆者の方の視点で考えることもできたでしょう。世界遺産の宮島も写真や動画ではなくて、実際に自分の目で見て、潮の満ち引きという理科の知識と結び付けて景色を見た人もいると思います。こういう知識のつながりはとても大事で、授業で習ったことを別々のものとして覚えるのではなくて、それが何とつながるのか考えること、ちょっとカッコよく言ってみれば自分の中で知識をネットワーク化することで、学びはずっと面白くなるし、広がります。

    話がそれますが、ずっと前に教えたことのある中学生が大きな英語のスピーチコンテストで賞を取ったことがあります。タイトルは「An Old Man And a Cheeseburger」。どういうことか、というと彼女は公園のベンチで一人でマクドナルドのチーズバーガーを食べているおじいさんを見て、そこから高齢化社会での老人の孤独をテーマにスピーチを作り上げました。老若男女問わず、公園のベンチでチーズバーガーを食べている人は山ほどいます。でもその光景を見て何かを考える人は少なくて、大抵は見過ごしてしまいます。一見何の関係もないようなチーズバーガーと老人問題をつなげた彼女の「結びつける力」に私は心から感心しました。まさに点と点を結ぶネットワーク化です。

    学びは決して数学や英語とかの教科にとどまるものではありません。いつもの授業以外に学校でも体験できること、経験できることもたくさんあります。例えばまさに今朝、タイの模擬国連に参加する人たちが出発しました。模擬国連は英語と歴史や政治経済の知識を結びつける学びのネットワークがとても活かされる活動です。海外模擬国連といった大きなことに限らず、学校は皆さんが興味を持ちそうなことをこれからも提供していきます。存分に利用して学んだことを結び付けてネットワーク化してください。そうすることで、点と点、線と線がつながって皆さんの学びが大きく変わるはずです。そのためには興味のあることに積極的に取り組むこと、そして自分の周りで起きる出来事をよく観察すること、疑問に思ったことは自分で調べてみることが必要です。チャンスを逃さないように、チコちゃんじゃありませんが、ぼーっと生きていてはいけませんね。

    学年が終わり4月からは新しい学年に進みます。終わりはいつでも新しい始まりです。4月の新しい始まりに向けて皆さんよい準備をしてください。