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校長ブログ

~校長室の窓から~「放送朝礼のお話(数学科 富田先生)」

2022.09.01

 

   おはようございます。数学科の富田です。

   皆さんは「アルコール依存症」を知っていますか?以前はよく「アルコール中毒」と言われ、お酒を飲み過ぎることによって健康を害し、周りの人にも大変な迷惑をかけることもあるので、なった人が悪いように言われることがよくあります。すなわち「自己責任」です。しかし、昨今、これは「病気である」と認識されています。

   アルコール依存症は病気ではありますが、薬で完全に治すことはできません。いちばん重要な治療は、アルコールを一切飲まないことです。一口でも飲んだらそれまでの積み重ねがゼロに戻る、というかマイナスになってしまいます。ただ、依存症の人が一人でお酒を飲まないでいることは大変なのです。そのため同じ病気の仲間たちと会い、話をしたり聞いたりしてお酒を飲まない日を一日一日と積み重ねていく集まりがあります。私が大学生のとき、その中のAA(アルコホーリスク・アノニマス)というグループに出会いました。

   あるお正月、あるAAグループのリーダーの人に「明日、新春メッセージに行くけど一緒に行かないか」と誘われました。いわゆる依存症の先輩たちが入院中の人たちに「一緒に頑張っていきましょう」とメッセージを送るわけです。私は特に予定もなかったので横浜の上大岡の近くにあるアルコール依存症専門の病院に行ってみることにしました。その日は患者さんたちの家族も集まり、運動会が行われるということでした。私には、入院している人たちの家族も集まるというのがとても不思議でした。なぜなら、家族はこの依存症によって考えられないくらいの苦労や嫌な思いをしてきたはずだからです。そして、そのときの私は「病気を治すかどうかは本人の問題でしょ。本人が頑張るしかないでしょ」と思っていました。でも、運動会の様子を見ているとなんだか和やかで、「私が思っていたことはなんか違うな」と思いました。「自分を気にかけ、共にいてくれる人がいる」ということは、依存症に悩む人が目標に向かって進むために大きな助けになるのだと感じることができたのです。

    私は人生のテーマは「だれと共に生きるのか。どのように共に生きるのか」だと思っています。この日の訪問は,そのことに大切な気付きを与えてくれ、私には貴重な経験になりました。

 さて,今月の学校目標は「正義と連帯」です。この半年、多くの人たちがウクライナとの連帯を模索し続けています。また地球温暖化の問題も世界の連帯が必要です。このように「連帯」という言葉は皆さんに身近になっているのではないでしょうか。

    では、皆さんにとって「連帯」の反対として思い浮かべる言葉は何ですか?

ひとつは「分断」でしょう。民族や宗教、イデオロギーによる分断はもちろん、経済的格差による分断は世界や社会を不安定にさせる大きな要因になっています。

そして、私が「分断」と合わせて思い浮かべる言葉は「自己責任」です。この言葉は経済が悪くなり、日本の社会に余裕がなくなってくる中で、よく使われるようになってきました。誰かが批判にさらされるとき、この言葉があふれかえります。「自己責任」という言葉はいかにも正しく聞こえます。でも、本当にそんなに正しいのでしょうか?私はこのことを立ち止まって考えたいです。

   先ほどのアルコール依存症の話もそうです。お酒を我慢できずに病気になってしまったとき、それも自己責任と言われるでしょう。でも、そこに至るまでには個人では解決しきれない様々な困難があったかもしれません。

私には自己責任という言葉が、「それはあなたの問題です。私の問題ではありません」と言っているように聞こえることがあります。連帯することを拒否するようにも聞こえます。でも、実際はひとりひとりにも、社会にも、自己責任では背負いきれないことがたくさんあります。ですから、私たちには「それはあなたの問題です」というのではなく、「あなたの問題を私たちの問題として引き受けましょう」という姿勢が求められているのではないでしょうか。それが「共に生きる」ということでしょう。

 様々な人たちと共に生きること、連帯することは、ときに損をしたり、迷惑を被ったりするかもしれません。しかし、それによって気づくことがあります。ものの見方がかわります。固定観念から解放されます。実はそれが私たちを豊かにしてくれるのです。そのためにも、いろいろな人たちと関わるチャンスをいかしてください。視野を広げ、成長していきましょう。

 

黄色い花はルドベキア

花言葉は 「正義・公平」

中3ベトレヘム 内田 アイヴィー 睡蓮さん

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