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~校長室の窓から~「 放送朝礼のお話し(社会科 大原先生)」

2020.11.17

 今、僕の手元には一冊の本があります。『海からの贈物』、著者はリンドバーグ夫人。昭和42年に初版が発行された新潮文庫で、僕のものは平成十年のものです。装丁は二見彰一さんという版画家のもので、黒に近い濃紺を基調にして、奥に薄明かりのような線が横に伸び、まるで夜の水平線を眺めているようで、心を落ち着かせてくれます。

 チャールズ=リンドバーグといえば、1927年、25歳の若さで、初めてニューヨーク〜パリ間の無着陸飛行に成功し、アメリカの国民的英雄となった人物です。その妻がリンドバーグ夫人、この作品の著者、アン=モロー=リンドバーグです。有名な飛行機乗りの夫と知り合い結婚し、自らも飛行機を操縦するようになり、その体験をまとめた作品で作家としてデビューします。手元にある作品『海からの贈物』は、彼女の後年に綴られたエッセーで、身体を休めるために滞在した海岸での日々の中、妻として、母として、女性として、そして1人の人間として、自分の人生を見つめています。

 作品の中で、次のような箇所があります。

「我々が1人でいる時というのは、我々の人生のうちで極めて重要な役割を果たすものなのである。ある種の力は、我々が1人でいる時にだけしか湧いてこないものであって、芸術家は創造するために、文筆家は考えを練るために、音楽家は作曲するために、そして聖者は祈るために1人にならなければならない。」

 高校3年生の皆さんは、清泉での授業があと2週間弱となりました。その後、卒業試験を終えると、あとは受験本番まで1人での戦いとなります。高3の皆さんは、受験が新しくなる年の1年目として、早くから不安を抱きながら学習を進め、さらには今年の世界的な特殊な状況に直面しながらも、ここまでよく自分を高めてきたかと思います。

あと少しです。学校に来ている時間は授業の中で、友人たちと共に、人生できっと必要となる幅広い学びができる最後の時間です。その後、自分の目標を叶えるための孤独な時間が始まりますが、自分に向き合い、学習に向き合ったその時間は、確実に皆さんを強くします。

 そして学習は1人で進めるものですが、同じように1人で闘う仲間たち、あるいは本気で挑戦しようとするその姿勢をどこまでも支えていきたいと思っている人たちが、周囲には沢山いることを忘れないでください。

 作品の最後、アンは次のようにつぶやきます。

「波音が私の後ろから聞こえてくる。忍耐、―信念、―寛容、と海は私に教える。」

 

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