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~校長室の窓から~「 放送朝礼のお話し・7月の月目標(教頭 小川先生)」

2020.07.09

おはようございます。毎月1つずつ紹介する清泉が大事にする10の価値、7月は「一致・友愛」です。ポスターには「喜ぶ人と共に喜び、泣く人と共に泣きなさい」の言葉が添えられています。あれ、去年まで「兄弟愛」だった、と思った人、良く覚えてくれていましたね。日本語で兄弟、というとどうしても兄・弟の文字になってしまうので、それにとらわれないように、友愛、と変えることにしました。この、友愛をテーマにお話しするにあたって、私は昨年福井県を旅行した時のことを紹介します。帰る日の午後、たまたま時間ができたので敦賀という日本海に面した町に寄ることにしました。自転車を借りて市内を回っているうちに、港のそばに杉原千畝を記念した博物館があることがわかりました。杉原千畝は皆さんご存知でしょうか。日本の外交官で、リトアニアの日本領事館に勤務していた時、ナチスによる迫害を受けたユダヤ人がヨーロッパを逃れて外国に行けるよう、何千人ものユダヤ人に日本のビザを発行した人です。そのビザを持っていたからこそ生き延びた、ということから、「命のビザ」と呼ばれています。最初にその博物館を知った時、杉原千畝と敦賀に一体何の関係があるんだろう、というのが第一の感想でした。私の知識では「命のビザ」をもらってユダヤ人たちは生き延びることができました、で完了していたのです。ところが、博物館を見学すると実はまだ続きがあったことがわかりました。ビザを受け取ってヨーロッパを出たユダヤ人のほとんどは、陸路シベリアを横断したのち、船に乗って日本海を渡り、敦賀の港に上陸していたのです。19409月以降敦賀の港には多くのユダヤ人が着の身着のまま、難民として押し寄せました。正確な人数はわかっていないのですが、4000人から5000人くらいのようです。彼らはシベリア横断中、金目のものを奪い取られるなどしたため、持ち物はろくになく、着るものも汚れて、大変みすぼらしい状態でした。そのようなユダヤ人が大勢やってきたのです。 今だったらどうでしょうか。言葉もわからないみすぼらしい難民が何百人も何千人も押し寄せてきたら、不安だし怖いし、で近づくのを躊躇したくなりますよね。しかし、そんな状況で、敦賀の人たちは街に現れたユダヤ人たちを気の毒に思い、食べ物をあげたり、お風呂屋さんを開放して労ってくれたそうです。命からがら逃げてきた人たちにとって、どれほどほっとしたことでしょう。持っていたビザでは長期の滞在はできなかったため、ユダヤ人の多くは敦賀からまもなく、神戸へ移動し、さらにそこから米国などの外国に渡っていきました。

杉原千畝さんの「命のビザ」は今では多くの人に知られ、ドラマにもなりました。その続きの、敦賀に住む名もなき人々の行動は、ユダヤ人の滞在期間が短かったからでしょうか、殆ど知られていないように思いますが、私の心には深く残りました。敦賀の市民は、きっとあれこれ考えずにただ、「あの人たちが疲れていたみたいだから、汚れていたから、おなかを空かせていたから」そして「同じ人間なんだから」といった素朴な気持ちで行動したのだと思うのですが、それがまさに「友愛」です。そして疲れ果てたユダヤ人が安心して元気を取り戻したように、そんな気持ちから起こす一つ一つの小さな行動で私たちの日常はより良くなっていくのでしょう。そして今、私たちは大雨や洪水の被害に苦しむ人たちに心を寄せたいと思います。

さて、最後にお知らせです。9月以降、毎月の月目標のポスターを書いて下さる方を募集します。テーマに沿ったポスターを描いてみたい、と思った人は大滝先生、望月先生に申し出てください。待っています。

以上でお話を終わります。

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