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校長ブログ

~校長室の窓から~「 卒業生へのことば 」

2019.03.07

 69期生の皆様、ご卒業おめでとうございます。又、保護者の皆様にも心からお喜び申し上げます。本日は皆様の卒業を祝し沢山の来賓の方々がいらして下さいましたので、まずご紹介いたします。                  

 学校法人上智学院 評議員
  イエズス会 日本管区長  レンゾ・デ・ルカ神父 様
 学校法人清泉女学院 理事長 塩谷  淳子  様
 清泉小学校 校長 大西 貞弘 様
 清泉女学院中学高等学校 泉会 会長 緒形 啓明 様、 緒方 知枝 様
 清泉女学院中学高等学校 白水会 会長 立道 伸一郎 様
 ラファエラ・マリア会 会長 陶山 優子 様

 皆様 ご多忙中にもかかわらず、ご臨席を賜り厚く御礼申し上げます。

 さて69期の皆さんが、新入生として入学式を迎えたのは2013年の4月でした。
 入学したばかりの皆さんは、新しい生活への期待と不安でいっぱいだったことでしょう。そしてあれから6年の月日が瞬く間に流れ、いよいよ清泉女学院を巣立っていく日を迎えました。
 私は皆さんが高2のとき、おひとりおひとりと面接をしてきました。「校長室に入るのは初めてです。」と言う方がほとんどでしたね。短い時間でしたが、皆さんが色々な話を聞かせてくださりとても楽しいひとときでした。その話の中で「この6年間を振り返ってみて、清泉での生活はいかがでしたか。」という問いかけに「中学2年や3年の頃はクラブやクラスの中で友人とうまく意思の疎通ができず人間関係に悩んだときもあった。でも高校生になってからはよく相手の話を聞き、理解できるようになり今はとても楽しい。充実した学校生活が送れて本当によかった。」とたくさんの方が言ってくださいました。とても嬉しかったです。

 最近とても興味深いテレビ番組を見たので、今日はそのお話を紹介したいと思います。それは「土星探査機カッシーニの遺産」という番組です。ちょうど、それが放映された頃日本では「はやぶさ2」が小惑星「竜宮」への着陸が成功した!と大きく報道されていたときでした。
 ところでカッシーニというのはアメリカのNASAが開発した土星探査機の1つです。1990年に開発が始まってから最後のミッションまでの期間がなんと20年にも及んだということにまず驚きました。そして番組を見てさらに驚いたことがありました。

 まずその一つ目は、ガリレオが地動説を唱えていた時代、すでにイエズス会が独自にバチカン天文台を設立し、科学的な天体観測を行っていたと言うこと。そしてその観測結果に基づき教会はガリレオの時代すでに地動説を受け入れていたのでした。番組に登場されたイエズス会のバチカン天文台長コンソルマーニョ神父は隕石の専門家ですが、科学の追究は「真理」で、真理こそ「神」であるとのべておられました。

 そして2つ目は、「土星探査機カッシーニ」のミッションで中心的な役割を担ったのは当時としては珍しかった2人の女性科学者と技術者でした。特に科学者のスピルカー博士は、仕事の合間を縫うように出産し子育てに奔走しながら探査機の開発をしたそうです。20年にも及ぶミッションのグランドフィナーレ(最後の大仕事)は、探査機を土星本体とリングの間に22回すり抜けさせるという前代未聞の挑戦でした。挑戦は見事成功しカッシーニは土星の大気中で燃え尽き任務を終了しました。
 このカッシーニ探査により土星を取り巻くリングが大小の氷でできていることが実証されました。又、土星の衛星「エンケラドス」は氷で覆われた地表から液体の水が噴出していることがわかり、氷の下に生命誕生の可能性がある水の海が広がっていることを明らかにしたのでした。近い将来、地球外生命の存在が現実になるかも知れませんね。2017年に任務を終えたカッシーニの貴重なデータは世界中の科学者による解析がはじまり、あらゆる太陽系の姿を描き出そうとしています。

 そしてさらに注目すべきはミッションに携わった260名中3分の1が女性でした。それ対し、日本の「はやぶさ2」の報道で画面には女性の姿がほとんど見られませんでした。
「はやぶさ2」の開発にあたったJAXA(宇宙航空研究開発機構)でも近年女性を積極的に採用しようという機運の高まりをみせてはいるそうですが、研究職に就く女性の割合は欧米諸国に比べてまだまだ低い状態が続いています。これらの傾向はJAXAに限ったことではありません。日本のあらゆる分野で管理職に携わる女性の割合も同様に低いのが現状です。これは日本に古くからある慣習、つまり男性は外で働き、女性は家事・育児に専念するなどの分業体制支持の考えが本音の部分で密かに存在していることや、実際に女性が管理的な仕事のついても周囲の思惑や自身の精神的・肉体的負担により仕事を継続できない環境が存在していることだと思います。最近問題となった、私立大学医学部における女性差別の入試判定など、表面化する問題以外にも男女を公平に扱わない社会通念はいまだに生き続けているのではないでしょうか。
 皆さんは卒業してしばらくすれば、ほぼ全員の方が選挙権を持つことになりますね。これからは政治や経済など将来の自分自身の生き方に深く関わってくる社会の動きにも目を向けて、納得できる仕事を選択し、心豊かな人生を送ってほしいと願っています。どう働くかは、どう生きるかにつながるのです。

 私たちは毎朝主の祈りをとなえ聖歌をうたって一日がはじまりましたね。先ほどの聖書朗読の内容は、今まで何度となく歌ってきた「ごらんよ空の鳥」です。2番の歌詞の中に「どんなに苦しい悩みのときも希望を注ぐ父がいる」というのがありました。悲しかったり苦しくなったときは、そっと心の中でお祈りをし、歌を口ずさんでみてください。やさしいおだやかな心をとりもどせるはずです。そして6年間この清泉女学院で学んだ皆さんは聖ラファエラマリアの教え「すべての人が幸せになるように働くこと、それが本当の愛」今はわからなくてもこの言葉が自分の心の中に宿っていることにきっと気づくと信じています。
 どうぞお元気で。そして皆様の上に神様の豊かなお恵みが注がれますようお祈りしています。以上をもちまして「卒業生へのことば」とさせていただきます。

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